今回は、熊野古道で知られる『熊野三山』についてお話したいと思います。
『熊野本宮大社』、『熊野速玉大社』、『熊野那智大社』の三社を合わせて、熊野三山と呼ばれています。
そしてその三社に共通するシンボルとされているのが『八咫烏(ヤタガラス)』です。 八咫烏は、神武天皇が熊野を越えて奈良の橿原に向かわれる際に高天原から遣わされ、道案内をしたということで「導きの神鳥」とされている三本足のカラスです。
サッカー好きの方には、日本サッカー協会のシンボルとしての方が馴染み深いかもしれませんね。 熊野の三社と、ゴールとされる橿原神宮には、八咫烏がデザインされたものが勝利へと導いてくれるお守りとしてたくさん置いてあり、わざわざこのお守りを求めに遠方から参られる方もいらっしゃるようです。
熊野の山はとても深く、自然信仰だけではなく、密教や修験道の修行者にとっての聖地でもありました。 神様だけではなく、仏様につながる道でもあります。
熊野は蘇りの地とも呼ばれ、本宮大社、速玉大社、那智大社の3社は、それぞれ過去、現在、未来を表し、順に参拝すると良いとされています。 昔から「伊勢へ七度、熊野へ三度」と言われるほど、多くの人々にとっての大切な土地であり、「蟻の熊野詣」と呼ばれるほど参拝の人が連なっていた時代もあったようです。
山道ですので、実際の距離の割には時間がかかります。 昔の人はこれを歩いて行ったのかと思うと、いかに信仰の力がすごいものかということを感じずにはいられません。
「昔は都から来るのに『難儀な地』だったから『なち』と呼ばれるようになった」という説がございます。
長い山道も急な石の階段も、歩いているうちにいつの間にか無心になり、己の心が試されている修行の時間として、心を清めるためには必要なことなのかもしれません。
熊野三社には、『牛王神符(ゴオウシンプ)』と呼ばれるものがあります。 御朱印とは違いますが、そこでしか手に入らないものとして、御朱印所で目にすることができます。
カラス文字で書かれた御神符で、三社でそれぞれ描かれているカラスの数が違います。 本宮大社は88羽、速玉大社は48羽、那智大社は72羽とされています。
牛王神符はあらゆる災厄から守ってくれるものとされていますが、これは誓約書の意味を持つものでもありますので、なかなかお気軽とは言えません。
熊野権現への誓約を破ると、「熊野大神の使いである烏が一羽亡くなり、本人も血を吐き地獄に堕ちる…」と言われるのですから、参拝の際は心してお持ち帰り下さい 。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。